半導体業界、天気は晴れ一時的に曇りになることもあるでしょう。
就活生なら気にせざるを得ない「業界の見通し」。コロナの影響もあって経済ニュースを見るようになった学生も多いのではないだろうか。経済ニュースとまではいかなくとも、テレワークやリモートワークが一般的になったり、街中の知っている店が閉店しているのを見たり世の中の変化を実感していることだろう。
コロナと就活関連のニュースはというと、残念ながら暗い話題も多い。エンタメ業界や旅行業界は、そのの煽りを直接的に受けている。製造業においても、先に挙げたBtoCの購買縮小の影響を受けている業界もある。一時は給付金10万円の効果で家電の買い替え特需もあったが、それもすっかり落ち着いた。
製造業における目下の話題は5GとCASE/MaaSなどDX関連のことだ。次世代に向かっての改革・革新なので、天気は快晴と思いきや、現実はそうではない。新しい時代に新しいモノ・コトが生まれるということは、古い時代に残されていくものもある。自動車を例にとると、EV化によって電子部品や半導体は重要性を増すが、エンジンなどの内燃機関は徐々に不要なものになっていく。今、各社は新時代へ進むための戦略を考えている。
では、本題の半導体関連産業の明日はどうだろうか。
ここ数年の半導体関連のニュースといえば、というよりも半導体業界は浮き沈みが激しいというイメージをもつ学生も多いと思う。
確かに以前はシリコンサイクルという景気循環は存在した。技術革新の目まぐるしい半導体デバイスは、在庫のストックがしづらく最終商品の生産サイクルと噛み合わないことから、需給のバランスが崩れて生じるものだ。しかし、現在でも多少の浮き沈みはあるものの(どのような産業でも短期的な変動は当然ある)、最終製品のライフサイクルの短期化に伴って、かつてのような激しい浮き沈みは見られなくなった。
むしろ、半導体が用いられる製品数が増加していることから、長期的には今後も成長を続けると予測されている。
今、このコラムを読んでいるPCやスマートフォンをはじめ、身の回りのいたるところで(電気が関わるところほぼすべて)半導体が必要とされている。納入先の幅と深さが広がっているということは、どこかの業界が沈んでも、全体で見たときに安定性があるということになる。
半導体は「産業のコメ」と言われている。元々は冷戦後の日本の中核を担う産業という意味で使われていたが、最近では「すべての産業の礎」という意味で使われることの方が多い。これは前節でも書いたように、納入先が多岐に渡っているということだ。日本に限った話ではなく、世界的に見ても半導体の重要度は増しており、コメどころではなく「世界の産業の主食」になりつつある。
様々な場面で使われる半導体を製造するために必要な技術もまた幅広い。ここからは半導体の業界構造と必要とされる学科の知識について整理する。
半導体業界は、求める技術水準が高いだけに分業化・専門化が進んでいる。この業界は半導体デバイス(半導体チップ)、半導体製造装置、素材材料、専門商社、設計専門メーカーのすべてを纏めて考えることの方が多い。様々な企業の分業は日本国内だけの話ではなく、国籍関係なく進んでいる。
業界の構造を大まかに示したのが次の図だ。
図1で示した製造工程をもう少し細かく見ていこう。製造工程で用いられる装置は大型精密機器だ。すなわち、機械系・電気電子系・情報系の知識がベースになっているが、製造プロセスに活かされている知識は、化学系・物理系の知識がベースとなっている。また、製品や工場周辺のアセスメントには一見、この業界とは関係なさそうな環境系の知識も求められている。
図2は半導体の製造工程と求められる代表的な学系をごく簡単にまとめたものだ。
半導体業界を就職対象として見たとき、いくつかの理由から「狙い目」ということができる。 この節では、①内定倍率 ②理系キャリアの積み方 ③職種の多様性 の3点から就職先の候補に入れるべき理由を書きたい。
①内定倍率 各社には「採用計画」があり無制限に内定を出せる訳ではない。しかし、学生がエントリーをするのは自由だ。当然、人気企業と不人気企業に分かれる。ただ注意してほしいのは、ここでいう「不人気企業」は必ずしも「劣っている企業」ではない。エントリー時での人気企業をまとめた下表にある通り、上位企業の大半をBtoC企業が占めている。 少し打算的な意味合いになるが、「知られていない優良企業」として半導体関連企業を探すのもいいだろう。
②理系キャリアの積み方 はじめに断っておくと転職が良いか悪いかという話ではない。だが、将来のキャリア形成を計画する中で転職を無視することはできない。同じ会社で技術を極めたり、同職種で他社へ移って専門性を高める以外にも、デバイスメーカーの設計職から専門商社のアプリケーションエンジニア、製造装置メーカーのマネジメントなど、半導体を軸として水平的なキャリア展開をすることも可能だ。本コラムでも書いてきたように水平的分業が進んでいる業界ならではのことだ。 正直なところ、新卒就活時に明確なキャリアビジョンを描くことは難しいと思う。 半導体業界では、(もちろん入社後の努力を前提としているが)様々な可能性を持ちながら働ける確率が高い。
③職種の多様性 多様性という観点では、業界の職種数も挙げられる。 他産業同様、半導体デバイスメーカーにも半導体製造装置メーカーにも研究職や設計職、品質保証・管理職のポジションがある。これに加えて半導体業界には独特のポジションがいくつかある。 例えば「プロセスエンジニア」という職種の役割は「いかに効率よく量産するか」を考える仕事だ。半導体製造に与えられる手順を「レシピ」というが、料理のレシピ同様に、材料を処理する手順・方法や温度やガスの流量といったパラメーターの分析・検討・調整をする。 半導体業界にある職種数は製造業随一だ。技術との関わり方、製品との関わり方、クライアントとの関わり方…など学生個人の「こだわり」にマッチする職種が必ずあることだろう。
授業やニュースで一度は聞いたことがある半導体。理系人材としてのキャリアを意識するのであれば、意識しない選択肢はない。ただ、説明したように奥深い世界だからこそ、その分、情報を整理するのも難しい。
SEMI FREAKSでは業界の魅力を分かりやすく伝えていくので定期的にチェックしてほしい。